Top > 学校スタッフリレーエッセイ「わたぼうし」 >人はなぜ酔いを求めるか

学校スタッフリレーエッセイ「わたぼうし」

20167月】「人はなぜ酔いを求めるか

深貝登志子

人はなぜ酔いを求めるかなんて、気取った心理学的タイトルで、いささか恥ずかしいのですが、編集担当の方から何か「題を」と言われて、ふっと思いついたのがこれでした。

どっかの偉い先生が使ったタイトルのような気もしますが、勘弁してください。私は学者でも研究者でもなく社会福祉の仕事に携わる中で、あちこちの研修会で多くの先生方の講義を聞く機会を得られました。今日は、私が学んだことを少し伝達することが出来たらいいなという気持ちで書いています。さて、「酔い」という言葉から、皆さんは最初に何を思い浮かべるでしょうか。

「酔い」という言葉は、辞書的には「酒などに酔うこと」としてありますが、この「など」が曲者なのです。また「酔う」という言葉を引くと3番目に「ある雰囲気の中にあって、批判力、自制力を失う」とあり、酒はその手段のひとつでしかないということが言えると思います。

サルに酒を飲ませてアルコール依存症にさせる実験をしたという話を聞いたことがあります。檻の中でボタンを押せばいつでもアルコールが飲める仕掛けになっていて、サルも酔っ払うと気持ちがよいので、いつでも好きなだけ飲んで最後は死んでしまったというような話なのですが、実際に私が実験をしたわけではないので詳しい状況はわかりません。ただ、同じように酔うことが好きで酒を飲む私たちは、サルとは違い、時折後悔しながら、あれこれ悩みながら飲んでいると思うのです。二日酔いの朝、「こんな辛い思いをするくらいならもう2度と飲まない」と決意しても、夕方になるとなぜか飲まないと寂しくて、「ちょっとだけにしよう」と自分に言い訳をしながら飲む人もいます。健康診断で肝機能が悪いと注意されて、1ヶ月ぐらい断酒したり、控えたりして、少し肝臓が復活してくると、ホッとして、恐る恐る飲み始め、酔うとこんないいもの止める必要はない、今度は上手に飲もうと、努力をしたりもします。「徒然草」で有名な吉田兼好は、その中の175段に(全部で244段あったのでは)「酒は百薬の長(漢書)とは言えど、よろずの病は酒よりこそ起これ」と戒めを残しております。

人類の文明が始まって以来、酒は私たちの友でした。私自身、人付き合いの中で欠かせないものと思っています。また、酒に限らず人は酔いを求める生き物なのだと感じています。言い換えれば、人は酔いという快感を求めやすい生き物なのです。だから、戒めを忘れずに、一生上手に「酔い」と付き合うことをお勧めします。ちなみに、アルコール依存症以外に、覚せい剤、過食・拒食、買い物・ギャンブルなど心身の健康を脅かし、社会不適応、自己破壊の方向へ向かう依存症もあります。誰でも、依存症になりうる可能性がありますので、敵の正体を知っておいた方がいいと機会あるごとに学生たちに話をしています。


わたぼうし《記事一覧へ》