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学校スタッフリレーエッセイ「わたぼうし」

201412月】「『活かしあう』ということ

雲島絵美

「雲さん(雲島)はいいな~」…保育士として保育園で働いていた頃、よくこの言葉を言う同僚がいた。彼は私より1つ年下で、子どもに優しく、仕事熱心な保育士である。同じクラスを担当したことは無かったが、彼と保育の話をし始めると互いに熱くなり時間が経つのを忘れた。保育に対する思い・姿勢が似ていたのだ。ただ、彼は自分の考えや行動にどこか自信が持てず、自分のしていることに対し「本当にこれでいいのかな?」といつも自問自答していた。特に、保育のことを考える時、その真面目な性格からか硬く考え過ぎてしまうところがあり、それを自分のマイナス要素だと思い込み悩んでいた。そして、そんな彼はある意味「適当に」、ある意味「ゆるく」保育をする私を見て「雲さんはいいな~」「雲さんみたいに楽しく保育がしたい」と、私のことを羨ましがっていた。「いいな~」と言われた私は、正直嫌で仕方がなかった。自分自身のことを言われている手前、安易に励ますこともできず、ただ話を聞くことしかできなかった。

その年、私が担当していたクラスの子ども達が「キャンプごっこ」を企画した。その保育園では初の夜の時間帯の企画である。そのため、もう一人の担任と話し合いを重ね、タイムスケジュールを組んでいった。ただ、企画したのは子どもであり、実行するのも子どもである。大枠だけは何とか組み、後は「何とかなるか」という気持ちで当日を迎えた。

そしてキャンプごっこ当日、全工程において子ども達を、そして私のことを支えてくれたのは、他でもない彼だった。補助スタッフとしてキャンプごっこに参加してくれた彼は、殆ど打ち合わせもしなかったとは思えないような見事なサポートをやってのけたのである。担任でもない彼が、持ち前の丁寧さと、細やかさで、私の「詰めの甘いプランニング」を全てサポートしてくれたのだ。「手が離せないけど、シャッターチャンスだな」と思っていると彼は既にカメラを構えていた。「雨が降ったらどうしよう」と思っていると彼は既にテントを準備していた。「影絵の演じ手にもう一人欲しいな」と思っていると、彼は既に隣に来て演じようとしてくれていた。それらの全てを、打ち合わせも、当日の指示も無しに、彼はやってのけたのだ。彼の「真面目さ、丁寧さ、細やかさ」が、子ども達の企画を、そして私を支えてくれた。感動さえ覚えた彼のサポートは、私には決して真似できないことだった。

キャンプごっこは大成功に終わった。満足そうな表情で帰っていく子ども達を見送った後、私は彼と話をした。その時、心から「あなたはあなたでいいんだよ。あなたがいてくれて良かった。」と言えた。励ましでも、慰めでもなく、心からの言葉として、彼にそれを伝えることができた。

保育という仕事は、一人ではできない仕事である。私は、彼にそれを改めて教わった気がした。子どもが一人ひとり違うように、保育士だって一人ひとり違う。違う人間が集まってこそ、豊かな保育環境を生み出すことに繋がるのではないかと思う。勿論、保育士として守るべき「柱」は持っているべきだが、他者とは違う自分を堂々と表現できる保育士でありたいと思うし、また、この学校を巣立っていく学生達にも同様に育って欲しいと、心から願う。

あれから数年…、彼はもう私のことを「いいな~」なんて言わなくなった。彼は、自分のことをそのまま受け入れることにしたのだろう。それまでずっと話をしてきた彼だが、初めて肩を並べた気がした。


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